続いて慶應義塾大学経済学部の池尾和夫氏からお話を聞きました。アメリカ発の金融危機の構造を分かり易く解説されていました。「今回の金融・経済危機の展開過程は、3つのステージに区分して捉えることが出来、第1ステージは2007年から3月から2008年3月までのサブプライム・ローン問題と呼ばれている時期です。この時期は、米国連邦準備制度の事実上の斡旋による、2008年3月のベアー・スターンズのJPモルガンによる救済合併をもって終了する。そして、全般的な信用市場の危機に拡大した時期が、第二ステージである。信用市場の危機はいまだ完全に収束してはいないけれども、この第二ステージは2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻までとする。それ以降は、金融資本市場の危機を超えて、実態経済の悪化を伴う経済危機の様相を呈するようになるからである。すなわち、第3ステージは、2008年9月から現在に至る世界同時不況と呼ばれるようになった時期である。」と分析していました。
さらに、「金融規制監督の面で、今回最も問題なのは、新たに出現していた重層的な市場型間接金融の連鎖がほとんど規制の範囲外に置かれたことである。何らかの規制をかける必要性は指摘されてきたにもかかわらず、規制強化の動きは阻止されてきたとともに、不適切な規制緩和がむしろ実施されてきた。」と論点を明確にしていました。つまり金融の暴走を止められなかったという事だと思います。
結びに「現状は危機の再来を防止するために、金融市場と規制枠組みを強化する改革」を検討するに先立って、「今ここにある危機をいかにして収束させるか」に注力せざるを得ないものでる。実質的に機能を停止している米国の信用市場を再起動するためには、どのような方策が有効であるか。要するに、金融機関(あるいは、投資家)が流動性を留保しようという行動を取っているのは、将来の不安に備えてであると同時に、将来の機械に備えてであると考えられる。と池尾先生は結んでいました。
私の表現で繰り返すと、暴落して価格が下がった時に買うための資金を留保し、利益を上げられるという機会を投資家・金融機関がうかがっている。利益が上げられる確立が上がってくると、物件を買出す。この行為が連続的におこってくれば資金が回りだしていく。実態経済が回復基調に入っていく。その時の為に、再発防止策として適切な規制を整備していくことであると思う。
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