昭和28年に創業した場所は、東京都品川区荏原でした。その11年後、品川区東中延の地に移ってきたのは、今から45年前です。その本社工場が4月20日をもって閉鎖されることになりました。
昨年、9月15日のリーマンショック以来、世界の金融システムが機能しなくなり、アメリカ発の金融危機が起こりました。この金融危機が起こった時、マスコミの報道は、日本は既に金融危機を克服したので、アメリカより影響は軽徴であるとの論調を展開していました。しかし、10・11月に入ると経済の血液であるお金が回らなくなり、実体経済に波及し現在に至るまで経済は悪化の一途をたどってきました。そしていわゆる「派遣切り」が製造業を中心に各地で起き、報道は連日連夜「派遣切り」を行った派遣先の企業の非道を伝えていました。企業は派遣会社と契約を行い、法律に則り契約通りに実施していたにもかかわらずです。それは一ヶ月前に予告をして契約解除するか、一ヶ月の契約料を支払って即解除するかのどちらかです。しかし報道は過熱し、派遣会社への取材はなく現状認識を行わないまま、直接雇用していない派遣先の企業が矢面に立たされてしまいました。「法律を守っていればいいのか」と派遣労働者への救済を強く訴えていました。結果として世界同時不況の本質を外した議論が展開されてしまったと思う。
こうした状況に対応するためにセイフティネットを整備し、救済に当たるのは政府の仕事であると思うのだが、報道はセイフティネットを未整備のままにしていた政府の怠慢は取り上げず、派遣先の企業を標的にして批判を繰り返していた。私はこれまでの不況と質的に違い、大変なことになると思っていましたが、報道関係の人達はリーマンショック後の世界同時不況の影響を甘く見ていたように思います。トヨタが業績の下方修正を行い赤字決算に陥ると発表し、いわゆるトヨタショックが起きるとようやく冷静に世界同時不況の本質を議論するようになってきた。報道は事象の現象にとらわれず、 本質を見極めた議論・報道をしてほしいと思う。今起きたことの現象には必ず原因があります。この原因を分析していき、真の原因が分かれば問題は解決できると思いますが、本質を外した議論・報道では問題の解決にも役に立たず、世論を誤った方向に導いてしまうと思います。
大分話がそれましたが、今回の危機は過去に例の無い不況と捉えています。不況を乗り越えるため、昨年の10月からいろいろの対策を実施していきました。
東京工場の工場部門を茨城工場に集約するのもその対策の一つです。東京本社は、このような状況で借り手があるか分かりませんが、1・2階はテナントとして貸し出し、3階は本社として機能を残していきます。
この変化の激しい時代を生き抜いて行くために、過去に とらわれてはいけないと思っています。今の時代を生き抜くために、今なすべきことを実行していくことが肝要であり、ダーウィンの進化論に「世の中で生き残っていくのは最も強い者でもなく、最も賢い者でもない。変化に対応できる者だけが生き残ることが出来る」とあります。まさに変化に対応しないと生き残っていけません。東京工場の閉鎖は少し寂しい気持ちはありますが、生き残って勝ち抜いていくための積極的な施策と捉えています。