中国就職事情(2)

「農村へ行け」と言われても...

 

また、"上山下郷(農村へ行け)"のスローガンの下、大学卒業生を農村官僚として登用する運動も 就職難を解消する方策として奨励されている。2008年に始まったこの運動に応じて農村官僚になった大学卒業生は2009年5月末時点で既に13万人に達したと公表されている。

大学卒業生には農村官僚となることで大学4年間の授業料免除や補助金支給など種々の優遇措置が供与されることになっているが、大学卒業が都市居住権の確保という一面を持つことから、中国政府の掛け声とは裏腹に農村行きを志願する応募者は極めて少ないのが実態である。

 これには、「一度農村へ行けば二度と都市には戻れない」という恐怖感も大きく作用しているようだ。(注2)

(注2) かつて中国では大学卒業時点で"分配"と呼ばれる就職先の振り分けがなされ、農村行きを命じられた者が都市に戻ることは厳しく制約された。大学生の親たちにとってこの昔の記憶は抜きがたいものがあり、子供の農村行きには大反対するのが常である。

 

 700万~800万人の就業を確保して就職難を解消することが至難の業であることは自明の理だが、高等教育を受けた大学卒業生の失業者が野に満ちれば、社会不安が増大することもまた自明の理である。従い、中国政府としては大学卒業生の就業率を高めねばならず、そのためには2009年のGDP成長率8%以上を確保することが必要なのである。

 2009年大学卒業生の卒業半年後の就業率がどうなっているか、今後の中国経済の動向を見つつ就業率も見極める必要がある。

 

「大学卒業生=エリート」という思い込み

 さて、1930年代の大学卒業生の失業はエリートとして高給待遇を求める理想と現実の乖離によるものであったが、現在の大学卒業生の失業は理想の追求を許さない現実によるものである。

 30年代には大学卒業生は極めて限定されたエリートであったし、49年の中華人民共和国成立以降も大学卒業生は依然としてエリートとして遇された。ところが、99年を起点として大学の入学枠が拡大されたことで大学生は従来のエリートの地位から滑り落ちることとなった。

 しかしながら、親たちは「大学卒業生=エリート」という従来の考え方から抜けきれず、無理をしてでも子供を大学へ入学させて卒業後の将来に過大な期待を抱く。子供たちはこれに応えようと努力するが、就職は思い通りにいかず、就職戦線をさまようこととなる。 「大学卒業生=エリート」という思い込みが払拭されるまで、中国の就職戦線は膠着状態を続けるだろう。 と結んでいる

我々日本人は、日本の大学卒業生数が56万人で、卒業生数だけでも中国の2008年559万人は日本の約10倍であることを肝に銘じて少子高齢化社会を乗り越えて、人口を最低でも維持していくことを真剣に考えなければならないと思う。

 

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