入社後1年が過ぎた頃、父から超高圧の給油ポンプを国産化する話が来たが、どうしようかと相談がありました。原油から作られたナフサを3,000kg/c㎡の超高圧に圧縮してエチレンを作る。そのときに圧縮するピストンに潤滑油を送る給油ポンプの開発です。圧縮する圧力と同じ3,000kg/c㎡の圧力で潤滑油を送るポンプ(HPポンプ)です。日立製作所がエチレンを作る石油コンビナートの受注を拡大し、又コストダウンの一貫としてスイスから購入していたHPポンプを国産化する依頼でした。日立製作所はスイスのメーカーと技術提携したので、図面は全て一角法で言語はドイツ語でした。当時、協立製作所は日立製作所の口座を持っていなかったため、懇意にしていた堀川実業㈱殿と共同開発で行うことにしました。
私の仕事はドイツ語の図面を日本語に翻訳し、社内の作業者や協力会社と打合せを行い、指導・監督することです。ドイツ語の翻訳は悪戦苦闘しました。学生時代にもっと勉強すればよかったと悔やんでも後の祭りです。部品が出来上がり、品質確認を行った後、組み立てし、性能検査は日立製作所で行いました。実力があったというべきか運が良かったと云うべきか分かりませんが、1回の試作でうまくいきました。完成までの期間は約10ヶ月と記憶しています。
日立製作所から相見積で競合していた上場会社よりも早く試作品を完成させ、性能試験もうまく行ったので、協立製作所・堀川実業㈱連合に発注したいとの連絡を受けました。しかし発注は条件付きでした。いくら試作品がうまくいったからといって量産品を生産するには、油圧の技術者・品質管理者がいなければ、重要な超高圧給油ポンプを発注できないといってきました。