今回のブログは7月10日のブログに掲載したが、見にくいので修正して再度載せることにしました。この報告書は経済産業省が中小企業の事例研究で弊社を「技術の範囲拡大型:生き残るために単加工から一貫生産、提案型企業へ」と題して報告した内容であるが、リーマンショック以前の調査研究のレポートである。㈱協立製作所を客観的に調査していただき、我々自身で気がつかないことが多数あった。この報告書は我社の強み・弱みを分析する上で大変役に立つと思う。
(1)創業以来の大きな技術変化
当社は工具の研削、刃付けを出発点とした企業である。当時、切削工具類は高速度鋼が中心であったが、そのうち超硬やセラミックに変わってゆく可能性も考えられ将来性がないと不安を感じていた。そのような時に紹介者を通じて油圧機器メーカーから部品の加工を持ちかけられた。これが当社の油圧機器との付き合いの始まりであり、当社の技術の原点である。当社は工具の研磨の技術を活かして研磨の単加工を請け負うようになっていたが、オイルショックの影響で受注が減少してきたため、茨城工場の機械加工と東京の本社工場の研磨加工とを組み合わせて一貫加工のできる企業として油圧機器メーカーに売り込みをかけた。このような形で営業を行っているうちに工作機械メーカーの紹介など幸運も重なっていくつもの油圧機器メーカー、建設機械メーカーとの取引を行うようになった。
この当時にあった大きな技術変化はNC旋盤の導入である。それまではフライス盤や旋盤などはすべて手動で操作するもので一人前になるのに10年もかかっていた。人を集めることが容易であると予測して建設した茨城工場であったが、実際には人の出入りが激しくなかなか技能者が育たない状況であった。この頃になるとNC旋盤の価格も中小企業の手に届く程度まで下がってきていたので、NC旋盤を購入し現社長が生産技術担当となってNC旋盤に関する生産技術を確立したところ大いに効果があった。
次の技術変化はスプールに関する一貫生産技術の完成度の向上である。機械加工と研磨加工の組み合わせによるスプールの一貫生産で油圧機器業界内での地位は確立されていたが、必ず競合の出現、値下げの要求があることを見越して自社のアイデア、生産技術を盛り込んだ工作機械を工作機械メーカーに改造させることにより他に追随できないワンチャックで機械加工ができる一貫生産技術を確立した。さらに斜め穴を開ける機構も工作機械に盛り込み技術の独自性を高め、これらを武器に油圧機器メーカーに提案営業を行うことができるようになり自社の技術力が高まり、油圧機器業界内で「研磨の協立」から「スプールの協立」へとブランド力を高めることに成功した。
このように当社は創業期をのぞき一貫して油圧機器、特にスプールを手がけているが、節目ごとに数次に亘り技術を変化させることによってスプールを中心とした油圧機器におけるオンリーワンの地位を確立してきている。
『TPM改善活動発表会 社長所感』