現地販売に方針転換したとのことですが。
進出当初、現地法人ではコストメリットを活かした部品を、国内では付加価値の高い作業を行っていました。現地法人で加工したものは100%本社へ輸出し、本社で品質保証をして販売していました。しかし98年のアジア通貨危機の際に仕事量が激減し、現地法人に発注する仕事が無くなってしまいました。日本向けの仕事だけでは、需要の変化に対応できないという教訓から、日本の本社向けに20%確保すれば、自社で営業活動を行い、自立する活動に方針転換しました。それから、顧客の紹介などの人脈を通じて、現地法人は新規取引先の開拓に取り組んできました。その結果、現在の取引先は上海に進出している日系メーカーにとどまらず、欧州メーカーにも広がりました。販売先の割合は、本社向けの輸出が10%で、現地日系メーカーな販売が40%、50%は欧州メーカー向けに輸出しています。
上海における事業環境の変化はどのように変わってきましたか。
上海では、人件費が急速に上昇しています。進出当時、人件費は工場労働者で約8千円だったが、現在は残業代まで含めるとおよそ4万円から5万円に上昇しています。また、上海などの沿岸部の人件費の上昇により、生産拠点が内陸部へシフトしていることも大きな懸念材料です。今後、内陸部に働く場所が出来たことで、内陸部から農民工といわれる労働者が、沿岸部まで出てくるかは不透明な状況になっています。
拡大する需要への対応は。
建機業界は、需要の変動が激しい産業です。油圧機器の需要は、リーマンショック後に大幅に減少しましたが、その後回復し、新興国の需要増加を背景に、2010年度比で2015年後は1.5倍に伸びると予想されています。当社も、拡大する需要に対応できる生産体制をいかに構築していくかが今後の課題になっています。設備投資だけでなく、人材の育成も最重要になっています。
企業の発展に向けては。
当社が進出した当時に比べ、中国に進出している日系企業も多くなりました。行政や地元金融機関の事務所も現地に置かれ、情報を集めやすくなっています。今後も国内の事業環境が好転することは、期待できない状況です。中小企業も国内だけにとどまらず、海外に進出して相乗効果をもたらし、国内の事業を発展させることが重要だと思います。