新年あけましたおめでとうございます。 2020年1月1日
2020年新年号に寄稿した。茨城県経営者協会の副会長を拝命し8年目になりました。毎年新年号に会長と副会長がそれぞれ前年を顧みて、様々なテーマで寄稿している。
昨年、建機の世界需要の半分を占めると言われる中国市場は、米中貿易摩擦や景気の減速懸念、個人消費の伸び悩みにも関わらず、油圧ショベルの需要は2018年のピークを越え、更に2019年は過去最高を更新している。しかし日系企業各社合計のシェアは1割強と低下しているが、中国国内企業は6割を大きく超えるシェアを確保している。一方内需は1~9月期では90年代以降では過去最高だった。10月以降は増税の影響や台風19号の影響でサプライチェーンが寸断され、各社の生産ラインが停止するという事態を招き、11月以降は下方修正され、下期は減産になる。
台風19号は茨城県をも直撃、5河川12か所で決壊し、大きな被害を与えた。被災された方々にはお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い復旧復興を願うばかりである。
我々建設機械の油圧機器を製造する企業にとっては、東日本大震災の被害以上であった。長野県の油圧機器メーカーが水害に遭い、油圧バルブが供給できなくなり、国内の建機メーカー各社は主要生産ラインを停止せざるを得なかった。10月12日に台風19号が上陸し、千曲川が氾濫した。千曲川は全6カ所が氾濫。堤防が70mにわたって決壊し、北部の工業団地の工場に氾濫した泥水が工場に押し寄せた。3週間程たった頃から北部工業団地で各社の復旧を阻む泥に多くの経営者がため息をついたという。冠水した機械は洗って乾かせば、修理可能ではないかという期待があったが、工場の浸水は深さ2mにもおよび、NC旋盤やマシニングセンター等は摺動部の軸受けなど精密部品や制御盤の基盤などに入り込んだ泥をすべて取り除くのは容易ではない。また錆も広がり設備の精度維持に悪影響があるのはいうまでもない。更に問題なのは、事務所にある図面・プログラム・受発注のデータなどの基礎データが、消失し、バックアップ用のサーバーも同じ階にあったので、全データを消失してしまった。応援に行ってもデータがない状態では一から始めないと何もできず、全国の建機メーカーの生産ラインが停止するという前代未聞の事態に及んでしまった。
このメーカーには災害後、各企業から復旧のため数百人規模の応援を受け、泥水の排除、工場の清掃、工作機械の清掃、制御盤内の基盤の乾燥、試運転、更に各ステークホルダーが集まり、国内の油圧機器製造の企業が加工を応援する等、利害を離れてメーカーとサプライヤーの助け合いが動き出した。弊社も及ばずながら応援を続けている。
今回の千曲川の水害で考えなければいけないことは、①社員の安否確認仕組み、②地元自治体のハザードマップの確認、③水害を想定したBCP訓練(地震だけではない、水害の方が工場の復旧には重症)、そして事務所設置の注意点は、データのバックアップ用サーバーを同じ階に置いてはならない。最低、事務所2階に設置し、総務・技術・品証・製造のバックアップ資料を保管する。更に機械プログラム、図面、治工具図面、受発注、オーダー、在庫なども同様に行い、出来ればこれらすべてのデータ保管はクラウド上で行うなど、今後の教訓としたい。