協立製作所が関わっている「油圧」。この仕組みや関連する製品・部品について詳しく説明していきます。
協立製作所の社員は、こういったことを理解して製品・部品を製造しています。
私達が通常見かけるブルドーザ、油圧ショベル、クレーンなどの建設機械は、油圧を利用してレバー1本を動かすことにより、あの重いブレードやバケットを動かして、掘削、積込み、重量の上げ下げを行っています。
作動油を媒体として動力を伝達し負荷を駆動する油圧システムは、小型な装置で大きな力あるいはトルクを取り出すことができるという長所を有しているため、建設機械、航空機、船舶、自動車等で広く利用されています。
図1:油圧ユニット構成例
油圧ユニットの構成は、流体のエネルギー発生源である油圧ポンプから送り出された高圧の油圧作動油を油圧制御弁で圧力、流量、方向を制御して油圧アクチュエータに送ります。ここで、流体のエネルギーは、機械的エネルギーに変換されて負荷を動かし、実際に仕事をしています(図1参照)。
油圧を知るには、空気圧のことも知らなくてはなりません。油圧と空気圧は流体(油と空気)の性質が本質的に違います。その大きな違いは、油は非圧縮性であり、空気は圧縮性であるということです。表1は油圧と空気圧の特性の比較になります。
項目 | 油圧方式 | 空気圧方式 | |
---|---|---|---|
圧縮性 | 非圧縮性 | 圧縮性が大 | |
圧力 | 高圧発生が容易 | 低圧 | |
操作力 | 大きい(数100[kN]まで可) | やや大きい(数100[kN]まで可) | |
操作速度 | やや大きい(1[m/s]程度まで可) | 大きい(10[m/s]程度まで可) | |
応答速度 | 速い | 遅い | |
精密制御 | 可能 | 不可能 | |
速応性 | 大 | 小 | |
負荷に対する特性の変化 | 少しある | 特に大きい | |
移動性(位置決め) | やや良好 | 不良 | |
構造 | やや複雑 | 簡単 | |
配管 | 循環用戻し管が必要 | 循環用戻し管が不用 | |
環境 | 温度 | 70[℃]程度まで普通 | 100[℃]程度まで普通 |
湿度 | 普通 | ドレンに注意 | |
腐食性 | 普通 | 普通(酸化に注意) | |
振動 | 心配少ない | 心配少ない | |
保守 | 簡単 | 簡単 | |
危険性 | 引火性に注意 | ほとんどない | |
信号交換 | 困難 | 比較的困難 | |
遠隔操作 | 良好 | 良好 | |
動力源故障時 | アキュムレータを付ければ少し作動 | 若干の余裕あり | |
据付位置の自由度 | あり | あり | |
無段変則 | 良好 | やや良好 | |
速度調整 | 容易 | やや困難 | |
価格 | やや高い | 普通 |
人間の体の中で特に循環器系、神経系を考えてみましょう。体を循環した血液は二酸化炭素をもって静脈に集まり、心臓の右心房へ戻ってきます。そして、右心室のポンプにより両方の肺に送られ、二酸化炭素は酸素と交換され、新鮮な血液は左心房を経て左心室より動脈に送り出されます。
老廃物は腎臓で分離され、排出されます。また神経系では視聴視覚から得られた情報が知覚神経を通って脳に行き、判断された命令が運動神経を経て筋肉へ伝えられます。
油圧回路もこの働きと良く似ており、アクチュエータ(筋肉)で仕事をした作動油は戻り油管(静脈)に集まり、フィルタ(腎臓)でゴミ等が除去されて油タンクに戻ります(図1参照)。油タンク(肺)は油中にある気泡等を放出し、ストレーナを通り、油圧ポンプ(心臓)より油の圧力エネルギーを与えられて圧油管(動脈)を経て油圧制御弁(運動神経系)に行きます。制御弁は制御指令(脳)を受けて動作します。アクチュエータ(頭、体、手、足等の筋肉)は、その圧力エネルギーを機械的エネルギーに変えて、負荷(被駆動体)を動かします。
表2は人間の体と油圧回路、電気回路の比較になります。
循環器系 | 心臓 | 油圧ポンプ | 発電機 |
---|---|---|---|
肺 | 普通 | - | |
脾臓 | 油タンク | - | |
腎臓 | フィルタ | フィルタ | |
動脈 | 圧油管 | 電線 | |
静脈 | 戻り油管 | 電線 | |
神経系 | 脳 | 制御指令、演算器等 | 制御指令、演算器等 |
運動神経 | 油圧制御弁 | トランジスタ、IC、リレー、スイッチ等 | |
知覚神経 | 検出器等 | 検出器等 | |
筋肉 | 頭、手、体、足等の筋肉 | 油圧シリンダ、油圧モータ、油圧揺動形アクチュエータ | 電動機、ソレノイド、リニヤモータ等 |
カウンタバランス弁とは、油圧によって動かされる負荷が静止した状態において、負荷の自重などによって急激に落下するのを防止する為に使用される弁です。
図2はカウンタバランス弁構造概要図になります。弁入口ポートの圧力Pが弁の入口に設けられたパイロット回路を通してこの弁のスプール下端の受圧面に導かれています。ばねの初期たわみは、負荷の自重によって発生する圧力Pが弁の入口に作用しており、この程度の圧力では出口ポートが開かないように設定されています。そして、弁スプールにかかる圧力が負荷の自重以上の圧力P1になると、スプールに作用する圧力による力が設定されたばね力に打ち勝ち、スプールが開き出口ポートから油が排出されます(図3参照)。この出口ポートにできた小さな絞りによって減衰効果が起こり、負荷を安定にした状態で下降させる事が出来ます。
図2:カウンタバランス弁構造概要図
図3:カウンタバランス弁開口時